●「論理的思考」重視の桜修館
桜修館の笠原副校長が「昨年の写真は木材。大人でも何を書けばいいか悩みますよね。論理的に考えることができ、自分の考えを相手にわかりやすく伝えられる子どもに入学してほしい。そのためにこのような作文の問題を出しています。子どもたちの豊かな発想力には驚かされます」と述べた記事が紹介されています(AERA 2015年7月27日号 p19より引用。なお赤青字化は中島による。dot.ドットに、AERAの記事の抜粋もあり)。ちなみに、桜修館では、「国語で論理を学ぶ」「数学で論理を学ぶ」という独自授業を実施しており、論理的思考の育成を重視しています。
●「論理的思考力・表現力」の効果
ところで、なぜ、桜修館は、「論理的思考力・表現力」の育成を重視しているのでしょうか?
それは、この力を鍛えれば、その人の活動全般の質が上がるからです。もちろん、学問の習得にも非常にプラスに働きます。桜修館では、そのことを十分認識しているからこそ、重視しているのだと思います。
そもそも「論理的思考力・表現力」は「話を聞き、考え、話す」という人の基本的活動に関わるものです(下図)。
まず、相手の主張とその理由を正確につかむ。次に自分の考えをまとめる。そして、自分の主張をその理由とともに、順序立ててわかりやすく説明する。これらを的確に行う力が「論理的思考力・表現力」です。要するに、コミュニケーションに伴うもので、実は、みんなが日常生活を送っているときに、無意識的に働かせている力なんですね。
ポイントは、「主張」と「理由」の把握。これを意識的に行うことです。これがその力の育成の第一歩です。このトレーニングを積んでいけば、一連の流れがスムーズに行えるようになります。「技術的なもの」だから、トレーニングで強化できるというわけです(ご近所の方なら、ぜひ教室へお越し下さい。「百聞は一見にしかず」です。具体的に体感していただければ、ご理解いただけると思います。)
実は、ここに、今の日本の教育の問題点、その改善方法、これから歩むべき方向などが示唆されていると考えています。私が「なかしまロジ・トレ教室」を開いた理由もここにあります。
●「学力が伸びる」桜修館 ・・・その理由
桜修館は、「中学受験の難度に比べ、大学合格実績が高いお得な学校ベスト200校」の偏差値56超部門の第4位にランキングされています(「中高一貫校・高校ランキング 2015年8月号」のP23 ダイヤモンド社)。「論理的思考力・表現力」強化がその要因の一つである点は間違いありません。
●「論理的思考力・表現力」重視の流れ
ここまで読まれた方は、「あなたは桜修館一押しなんですね」と思われたかもしれません。私は、その取り組みに賛同するものではあります。しかし、「桜修館」を取り上げたのは、「論理的思考力・表現力」の効果を示す好例ととらえているからです。繰り返しますが、生徒の学力伸長と「論理的思考力・表現力」強化には、因果関係があります。私の指導経験からも断言できます。
この「論理的思考力・表現力」育成の取り組みは、もちろん桜修館だけではなく、程度や表現の違いこそあれ、他の都立・私立中高一貫校でも多く見られます。
近年、その流れが大きくなっているように感じます。その最大のトピックは、「大学入試改革の動き」です。この動きは非常に気になります(この件については、回を改めて、お話いたします)。大胆に申し上げれば、何年か後には「論理的思考力」は、世間一般の方にも認知されている可能性が高いと思います。
●従来の「入試問題」とは違う「適性検査」
ところで、みなさんは、都立中高一貫校で実施されている「適性検査」をご覧になったことはありますか?いわゆる「入試問題」とは、その内容が大きく異なっており、「適性検査」と名付けられています。各学校は実施した「適性検査」をホームーページで公表しています。未見の方は、ぜひ一度、ご覧ください。びっくりされること請け合いです。ちなみに、桜修館の平成26年の1問目の木材の写真について、みなさんならどう解答されますか?また、どういう勉強すれば、解答できるようになると思われますか?