●入試内容…2つのタイプ
A 知識重視型 … 覚えている度合いが高いほど、高得点を取ることができます。
例:大学入試センター試験、公立・私立の高校入試、私立の中学入試。
B 思考力重視型 … 都(公)立中高一貫校の「適性検査」タイプ。PISA型(*1)。
例:都立高校推薦入試、一部の私立の中学入試
全体を見れば、Aが現在の主流。しかし、Bが今後増えるのは確実だと思います。
(*1)PISA … 国際的な生徒の学習到達度調査。読解力などを調査するもの。
国ごとに平均点が発表されるため、その結果を気にする人たちがいる。
●大学入試改革の方向… AからBへ!
昨年12月に中央教育審議会(中教審)の答申が発表されました。「2014.11.11 大学入試改革案資料」で検索すると、PDF6枚の資料が見つかります。以下、3点ほどピックアップします。
1 高2,3年対象に知識重視型の「高等学校基礎学力テスト(仮称)」を新たに導入。
その結果は、高校の学習成果を把握するための参考資料の一部として用いる。
2 大学入試センター試験を廃止 → 「思考力・判断力・表現力」を評価するテストの導入。
3 大学が受験生を個別選抜するときは、学力の三要素を踏まえた多面的な選抜方法をとる。
つまり、「AからBへ舵を切る」、との方向が示されたわけです。
●答申についての私見… 改革の方向には賛成!
「アウトプット」(自分の考えを発表すること)にもしっかりと重心をかけようとする、この改革の方向には、賛成です。今後、どこまで踏み込んで実現できるか注目したいと思います。
私は、大学入試まで受けた一人として、今の日本の教育にちょっと文句を言いたいとず〜っと思っていました。それは、インプット(知識を頭に入れること)に偏りすぎていて、アウトプットがほとんどない点です。これでは、訓練不足のため、意思表示をうまく行えません。さらに、知識重視型の入試問題では「丸暗記レベル」でも、かなり点を取ることができます。しかし、理解の伴わない知識を身につけても、何の役にも立ちませんよね。
さらに、怖いと感じていることがあります。長年、塾の講師をしていて、「ものを考えない生徒」が多くなったように感じます。大学教授に聞けば、「自分で考えようとしない生徒が多い」といいます。また、企業に勤める人に聞けば、「部下がろくに考えないで、答えを求めてくる」といいます。その要因は考える機会が圧倒的に少ないことにあると思いますが、何だか「いや〜な感じ」がしませんか?
●「世の中」の変化と「日本の文化」
昔は、インプットだけでもよかったんだと思います。物を作れば売れる、大量消費時代は。でも、今の世の中、物にあふれ、作っただけでは売れませんよね。では、どうするか?選択肢が多くある中、考え、行動しないと。
日本人は、昔から、明確な意思表示を避ける傾向がありますよね。空気を読んで。もちろん、いい面もありますが、ことビジネスの面では、マイナスに働くことも大きいように思います。特に対外的な交渉の場面などでは、そうではありませんか?
「論理的思考力」、「ロジカルシンキング」なんて言葉は、「人権」と同じで、われわれ日本人にとっては、「外来語」の域を出ていないのではないでしょうか?改善の余地があると思います。
では、いつから、だれが、どのように改善すればいいのでしょうか?
「考え方」は、日頃の習慣で形成されるものです。ですから、早期から取り組む方が好ましいと思います。効果が期待できるからです。私が「考える場として」小学校の低学年を対象にした教室を開いた理由の1つがそこにあります(もっと早くてもいいと思います。詳しくは、また別の機会に述べたいと思います)。
●中教審の述べる「改革のねらい」
中教審の答申によれば、現状の大学入試では、「知識の暗記・再現に偏りがちで、思考力・判断力・表現力や主体性をもって多様な人々と協働する態度など、真の「学力」が十分に育成・評価されない。」(上記資料より引用)と。この課題を克服するため、高校教育、大学教育、選抜試験を一体的改革として行い、若者の多様な夢や目標を支えたい、と述べています。
これまでの大学入試が知識重視型であった点は明白でしょう。というか、大学入試を頂点として、そこに向けて「高校入試」も「中学入試」も「知識重視型」という同一線上に並んでいると思います。ですから、大学入試が変われば、他も自ずと変わらざるをえなくなると思います。そうなると、塾も変わるはずです。
ところで、みなさんは「論理的思考力・表現力」の中核はなんだと思われますか?
次回は、その「論理的思考力・表現力」の具体的内容に触れたいと思います。